「タイムトラベラー」千穐楽のご報告

畠中洋主演シリーズ第2

ミュージカル座新作オリジナルミュージカル

「タイムトラベラー」

6公演は大好評のうちに幕を下ろしました。

大変大変遅くなってしまいましたが、千穐楽の…というか公演全体を通しての観劇のご報告です。

 

畠中さんにロックオン!な感想を挟みつつ、あらすじと全体の流れを書いてみました。

 

私がここまで詳細に書いてしまっていいのでしょうか?と思うものの、畠中さんが主演なのでどうしたって長くなってしまうのは仕方ないのでお許しください。

オープニングは古びた部屋に7-8人の人々が入ってくるところから。

そこは天才科学者ジョン・テイラーの研究棟。皆を案内してきたジム・カーディガンは、仲間の大学教授や学長たちと、ここに大学の新しい施設を作る相談をしている。

ジョン・テイラーが広大な土地と屋敷、伯爵家の権利のすべてをジムに譲ったのだと、ジムは権利書を見せる。

1人が聞いた。「それでいったい彼はどこに行ったんだ?あの変わり者は。」

 

全員によって、ジョン・テイラーの人物像が歌い継がれていく。(『ジョン・テイラー』)

「♪まぎれもない天才」「♪ノーベル賞候補」「♪服がチョークだらけ」「♪学生時代に世界的な論文を2つも書いた」「♪いつも何かを追い求めていた」「♪謎めいた科学者」「♪ピーナツパンばかり食べていた」などなど。

天才であるが故に変人だった彼の様子が浮かび上がる。 

彼は自分の研究に没頭するため6年前に教授の職を退き、電話でもメールでも連絡が取れなくなっていた。

しかし1週間前に突然学生時代からの親友だったジムに連絡があり、ジムはこの屋敷を訪ねてジョンと彼の妻リンジーに会った。

彼がすべての財産を残して消えてしまった理由を説明するため、ジョンから聞かされた信じられないような話を君たちに伝えよう、とジムは語り始める。

 

ここでいったん幕が下り、幕前でジムの回想シーンが始まり、テイラー邸を訪れジョンの妻リンジーと再会のハグをして下手に消えたとたん、あの壮大なテーマ曲が流れ(ミュージカル座の公式サイトで要チェックですよ!)、幕をスクリーンにして映画のオープニングのように「タイムトラベラー」の映像と出演者の名前がスクロールされていきます。

 

「主演 畠中洋」とでかでかと書かれたスクリーンを見て、「おおおおお!」と興奮してしまいました。

研究室に通されたジムは、6年ぶりにジョンと再会した。

テイラー伯爵家の第24代として生まれたジョンだが、自分の母の記憶がない。いつ、なぜ死んだのかもはっきり聞かされていない。写真も一枚も残っていない。

さらに自分の家系図で先祖をたどると、不思議な謎がいくつもあった。

自分とは何者なのか、愛されて生まれてきたのか、何をするために生まれてきたのか…自分のルーツを知りたい、そんな強い思いから、タイムマシンの開発に没頭していたのだ。

そしてついにジョンは、重力と空間の歪みを作り出すことで時間を自由にコントロールできるタイムマシンを完成させていた。

 

ジョンが壁のスイッチを入れると、部屋の奥から巨大な歯車やパイプのようなものが絡み合ったマシンが現れるのですが、このせり出してくる感じ、♪ずじゃじゃーん♪という音…まるで「ジキル&ハイド」で巨大な換気扇(失礼!)が現れるシーンそっくりじゃないですか!

 

ここから先は舞台下手前方の椅子に座ったジムに、ジョンがタイムマシンを使って自分のルーツを探るために行った時間旅行について語る、という形式でお芝居が進みます。 つまりこれはジムの回想シーンなので、本来はもはや「過去」です。

しかし、ジョン・テイラーが彼の正しい時代に存在しているところを「現在」と表現しますのでご了承ください。

 

 

タイムマシンを完成させたジョンはまず子供時代の自分に会いに行った。

人と考え方が違うことで「クラスの恥」とまで言われいじめら

れている子供時代のジョン。泣いている子供ジョンに、大人ジョンは「人の言うことも、親の言うことも気にしなくていい。まだ誰も君の才能に気付いていないだけだ。自分を信じて、前に進みなさい」と語りかける。

「自分に声をかけたのか!」と驚くジムに、ジョンは子供時代に自分を励ましてくれた見知らぬ人のこの言葉を支えにしてきた、ずっと誰だか知りたいと思っていたのだと語った。 

 

タイムマシンを完成させた自分が過去の自分を励ますことで、科学者として成功した今の自分があるという、卵が先かニワトリが先かというタイムパラドックスは…横に置いておきます。 

もしこれが他人であれば、いじめている子供たちの間に割って入って「仲良くしなさい」ぐらいのことは大人として言うでしょう。正直、大人から見たら「その程度」のことです。しかしちょっと離れたところから子供ジョンを見つめる大人ジョンの眼差し!この時の孤独感や傷ついた自尊心の痛みを彼は知っているわけです。子供の自分にとってそれがどれだけ大変な「生き辛さ」だったか、厳しい状況だったかを思い出しながら、そこで傷ついている少年の自分を憐れみながらもどこか誇りに思っている、優しさと悲しさと懐かしさの入り混じったような、なんとも言えない眼差しでした。

そしてここでの子供ジムと大人ジムのデュエットの優しい旋律も素晴らしかったです。(『私からの言葉』 ジョン&リトルジョン)

 

 

次にジョンは家系図の一番最初に書かれた初代テイラー伯爵…別名「笑う男エドワード」の謎を解明するため15世紀に行った。彼は土地や財産を持っていた記録もないまま突然初代伯爵として歴史上に現れていた。ロンドンの下水道整備などに力を注いだ人物でもあるらしい。

15世紀無秩序なロンドンで、暴漢に襲われたり暴漢に襲われて殴られた瞬間のジョンは、身体がぴーんと斜めになって一瞬静止後に吹っ飛んで倒れます。この赤塚不二夫のギャグマンガのような倒れ方、いったいどうやって身につけたんですか、畠中さん!) 、排せつ物や生活排水で汚れまくった街やテムズ川の悪臭に辟易しながら、リンジーが作ってくれた「15世紀っぽい」衣装を着て、ようやくジョンが探し当てた「笑う男エドワード」は旅芸人の一座にいる道化だった。しかも口の両脇が切り裂かれていて、その傷のせいで笑っている顔に見える。山道に捨てられていたところを旅芸人の一座に拾われたため、自分の出自も全くわからない。

手掛かりを求め一旦現代に戻ったジョンは、驚くようなリンジーの調査結果を聞かされた。

当時は王家に双子が生まれた場合、跡目争いを避けるために殺すか顔に傷をつけて捨てる習慣があったのだ。 もしかするとエドワードは王家の血筋に生まれた双子の片割れではないかと推測する。

しかし、たとえ王家の血筋だったとしても、身寄りもなく道化として生きている彼がどうやって伯爵になれたのか?

「鍵はあなたが握っているのよ」というリンジーの一言で、エドワードとなんらかの関係があると思われる王の騎士だった男に彼を引き合わせる。

するとその男が、顔を切り裂かれた赤ん坊のエドワードを捨てた本人で(顔を切ったのは彼ではなく医者)、そのことをずっと後悔し続けていたことがわかる。彼は跪いてエドワードにすべてを話し許しを請う。そしてジョンに、エドワードを伯爵として推薦すると約束した。

人に笑われる道化の人生から伯爵として生きていく道を作ってくれたジョンにエドワードは聞いた。「あなたは一体誰なのですか?」

「君の遠い親戚さ」

ジョンは、伯爵になったらロンドンの街やテムズ川をきれいにして欲しいと頼んだ。

 

再び現代に戻ったジョンは、この初代テイラー伯爵の功績とも言える今の美しいテムズ河を眺めながらリンジーと散歩を楽しんだ。

 

沼尾リンジ―の美しい歌声と、畠中ジョンの優しい歌声の相性が素晴らしくて、このシーンのデュエット『ふるさとの川』は本当に聴き惚れました!

ここにはたくさんのカップルが登場し、『ふるさとの川』は最後は大コーラスになるのですが、ちゃんとゲイのカップルもいたりして、まさにゲイが細かいのです。

 

 

次にジョンはロンドン塔に投獄されて死んだ先祖ヘンリーがどんな罪を犯したのかを知ろうと1601年に飛ぶ。ヘンリーは外交官として様々な外国で生活したことがあり、教養あふれる素晴らしい人物だった。 彼にグローブ座のシェイクスピアに届け物を頼まれたジョン。 あの偉大な劇作家に会えるのか!と興味津々で訪ねてみると、どうも想像していた人物とは全く違っていた。

総合プロデューサー的にグローブ座を仕切ってはいるが、女好きでお調子者で自宅に本の1冊も置いていない。とてもあのような名作を書けるとは思えない言動の数々。

そこでまたリンジーの調査が冴えわたる!シェイクスピアは字が書けなかったという説、別人説などが残っているが、ジョンが見てきたものは確かにこの説を裏付けるものばかり。

ではいったい誰があの作品を書いていたのか?シェイクスピアの作品の舞台となった国々に赴任したことがあり、語学にも堪能なヘンリーこそが影の作者だと推測する。

ある日、パトロンでもあるヘンリーの依頼で上演した「リチャード2世」が王に対する反逆だとして、作者のシェイクスピアが逮捕された。彼が本当の作者が誰かを話したら、ヘンリーの投獄は免れない。

ジョンは残されたわずかの時間にヘンリーを訪ね自分の推測をぶつけると、ヘンリーも自分が真の作者であることを認めた。

王家に任命された外交官で、伯爵でもある彼は、王族や貴族を風刺するような作品を自分の名前で発表するわけにはいかず、シェイクスピアの作品として世に出していたのだ。

自分の名誉にもならず、危険も伴うのになぜ?とジョンが問いかけると、ヘンリーは絞り出すように「書かずにはいられなかった」と答えた。彼のその強い思いこそが、多くの名作を世に残したのだ。

ジョンは「あなたこそ偉大な芸術家だ」と称える。

このシーンで歌われる『劇場』は、シェイクスピアと役者たちが全員参加で大盛り上がりする大ナンバーでした。

「リチャード2世」を急きょ上演すると決まった時、今からリチャード2世の膨大なセリフを覚えるのは無理だ!しかし彼なら昔演じたことがあるはずだ、と注目が集まったのが年老いた役者ベネットです。

一見足元もおぼつかないような感じで立ち上がったのですが、いったんセリフをしゃべり始めたら朗々と響く声と威厳に一同がびっくりします。

そこでベネットが歌う『役者の仕事』は本当に素晴らしかったです。

CATSの役者猫にも、光枝さんご本人にも見えるベネットを見つめる出演者の方々の表情が敬愛と尊敬に満ちていたのも観客の胸に響きました。

 

過去に行って謎を究明しようとする夫を現代でインターネットを駆使して情報を集めながらサポートするリンジーの調査能力は特筆すべきものです。(君ももっと調べてから行こうよ、ジョン!という説もあります。)

 

そして聞き手のジムは英文学の研究者なので、まさにシェイクスピアを尊敬し、あこがれていただけにこの事実に大ショックを受けます。

ここで3人が『それが問題だ』というナンバーで歌い踊ります!決して若くはない3人が(失礼!)シルクハットをかぶり、椅子、ステッキ(リンジーは傘、ジョンは長尺ものさし)を駆使しての軽快なダンスでした。 ちょっとフレッド・アステアの時代のミュージカル映画っぽい感じです。

 

次にジョンはリンジーと一緒に1912年に行った。

曾祖父ラリーと曾祖母グロリアはタイタニック号に乗り合わせ助かったはずなのに、曾祖父の自伝にはそのことが一切書かれていない。さらにリンジーの調査によれば、乗船名簿にも救助された人の名簿にも、ラリーの名前はない。

リンジーは貴族のドレス、ジョンはリンジ―のアイデアでなぜか船員の衣装。二人が乗り込もうとしたとき、なんと当のラリーが止める船員を振り切って船に駆け込んだ。ラリーを追いかけて行ったジョンは、グロリアの部屋に一緒に飛び込む。グロリアは、劇場を建てたり破産したサッカークラブを買ったりと、仕事もせずに趣味だけにお金を使うラリーに愛想をつかしてアメリカに渡ろうとしていた。 

これからは真面目に働くし、サッカークラブは手放してもいい、などと必死に止めるラリーだが、その場しのぎの言い訳にしか聞こえない。

「男らしくない。女のくさったような人ね!」とさらにグロリアの怒りを買う。 

なんとも憎めないとぼけたラリーと気の強いグロリアの掛け合いの面白さ!

 

そして歴史通り、タイタニック号は氷山に衝突し、船は沈み始めた。

優先して救命ボートに乗せられるのは女性と子供だが、船員の恰好をしていたジョンも滑り込めた。リンジーの先見の明!

そしてリンジーはラリーを女装させると一緒にボートに乗り込んだ。ラリーが沈んでしまったのでは、私は彼にひどいことを言ってしまったとボートの上で嘆くグロリアだが、女装しているラリーは名乗り出られない。

 

なぜ曾祖父が乗客名簿にも救助された人のリストにも載っていなかったのか、自伝にも書かなかったか…そのなぞは解けた。こんなことは恥ずかしくて人に言えるわけがない!なんとも愛すべきダメンズだったのだ。

 

さて、だんだん過去への関わり方が大胆になってきました。 

もちろん歴史を変えるようなことはできないという認識はジョンにもあるみたいなんですが、タイタニックに乗り込んじゃっていいのでしょうか?! しかも二人は沈没するタイタニックから何らかの手段でタイムマシンで現代に戻るのかと思ったら救命ボートに乗っているんですよ! え?つまり助かる保証がないままタイタニックに乗船しちゃってますよね。 死んでしまったらどうしたんでしょう? というツッコミは置いておいて…面白かったのはここでは主導権を握っていたのは完全にリンジーだったことです。

彼女はタイタニック号沈没にまつわる謎を調べ上げていて、探偵みたいに船内をチェックして回ります。そして船首部分ではしっかりとあのポーズを決めるためジョンに手伝わせたりします。 機転を利かせてジョンを船員に仕立てて救命ボートに乗せたり、ラリーを女装させたりと、大活躍でした。

 

船の人々が逃げまどい、海に沈んでいく様はものすごい迫力で、前方席に座っていると溺れる人たちを目の前にして、本当に息を詰めて見つめるしかありませんでした。

そんな中でも、映画にもあったようなエピソードやシーンがいくつも盛り込まれ、そんなに広くはないこの規模の舞台上でこれだけ大勢の人が生ききっている脚本にも感動しました。

 

 

次にジョンは1944年ノルマンディー上陸作戦で戦死した祖父スティーヴンの謎を探りに行く。

祖父が戦死した1年後に父が生まれているが、それは従軍期間を考えるとどうも計算が合わない。父は祖父の実の子供なのか?

空挺部隊としてなぜかスティーヴンと同じ飛行機に乗り込んでいるジョン。(暗転の後、飛行服にヘルメットをかぶって皆と一緒に体育座りをしているジョンの姿が笑えました。タイタニックに乗り込むよりさらに大胆に身体を張って過去と関わっているジョンです。いったいどうやって空挺部隊に潜り込んだのやら。) 

彼らはノルマンディーの橋の手前に降下するはずが、高所恐怖症のスティーヴンが降下を渋っている間にタイミングがズレ、二人だけがドイツに占領されたフランスの村に降りてしまった。まさに敵のど真ん中。

しかしそこには村民を装ったフランスのレジスタンスたちも住んでいた。連合軍の二人は大歓迎され、スティーヴンはここで出会った可憐なオードレイ(実はレジスタンスの隊長)に一目ぼれ。

高所恐怖症で戦闘恐怖症という度胸ゼロなスティーヴンだが、何を勘違いしたのかオードレイの目にはヒーローに映ったらしい。 レジスタンス達の活躍もありドイツの通信施設爆破に成功した夜、非常時故に燃え上がる二人の恋!(「おばあちゃんがフランス人だなんて聞いてなかったぞ!」と叫ぶジョン。) 

しかし翌朝スティーヴンはドイツ軍に見つかり殺されてしまった。

オードレイは翌年の終戦後、生まれた子供をスティーヴンの両親(ラリーとグロリア)に託し、自分はフランスを離れなかった。

ラリーとグロリアは乳母をこの子を育てさせ、後に乳母を養女にしたこともわかった。ジョンが自分の祖母と思っていたのは乳母であり、「父の実の母」ではなかったのだ。

 

キョウヤスティーヴンは、戦火に怯えて舞台上にある段差にヤモリのように張り付いて一体化している様子、一転オードレイのまえでは「こんなこと、何でもないさ」とカッコつけまくる変わり身の早さ、ひとつひとつが観客の大爆笑を誘いました。

そしてレジスタンスたちが蜂起したときに一人が叫びました。「われら民衆の手でフランスを取り戻すんだ!」

ここで畠中ジョンが「なんかレ・ミゼラブルみたいになってきたー!」と言うのも大爆笑で、全員で隊列を組み「One Day More」よろしく大コーラスで盛り上がります。(『レジスタンス』) 

 

それにしても、タイムマシンは「どこでもドア」ではないはずなので、フランスに渡ってしまったジョンがどうやってイギリスに置き去りにされているはずのタイムマシンのところまで戻れたのか、謎が深まります。(笑)

 

そしていよいよ自分の出生の謎、母のことを知る時がきた。

ジョンは父アンソニーが母と出会う前の時代に飛び、顔見知りになり様子を見守る。

アンソニーは友人ロジャーの紹介で知り合ったビビアンと意気投合して結婚したが、その結婚初夜、衝撃の告白をする。

「君のことを心で愛することはできても、自分は肉体的に女性を愛することはできない」と。ではなぜ結婚したのかとなじるビビアンに、伯爵家の血筋を絶やすわけにはいかないので、ロジャーを父親にして自分のために子供を産んで欲しい、と頼む。

1年後、ビビアンはロジャーとの間に生まれた子供(ジョン)をアンソニーの手に託すと、自分はロジャーと結婚すると言って去っていく。

この時にビビアンは、子供を手放す母の気持ちがあなたにわかりますか?もし会ってしまったら愛さずにはいられない、抱きしめずにはいられない、だから二度と会わない、死んだことにして欲しい、と歌う。(『母の気持ち』) 

 

どうして亡くなったのか知りたいと思っていた母は、自分と同じ時代をちゃんと生きていた…。ジョンは現代に戻ると、両親に会いに行った。

父は亡くなり、母は病院ですでに寝たきりの状態だったが、ジョンが名乗ると「一日だってあなたを忘れたことはなかったわ」と言って彼を抱きしめた。

 

全てを語り終わったジョンは、自分は伯爵家とは血が繋がっていなかったことを知った今、この家に縛られる意味はない、自分はここを出て行く、とジムに告げた。 

タイムマシンで幸せで平和な良い時代を見つけたので、リンジーと二人でそこで暮らすつもりだ、と。

いったいどの時代なのか?と聞いたジムに「それは内緒だ」と笑うと、ジムに伯爵家のすべての権利を譲るという書類を渡し、リンジーとタイムマシンに乗り込み、消えてしまった。

 

父アンソニーのエピソードはなかなか残酷なものでした。

ビビアンがアンソニーに子供を託して『母の気持ち』を激しく切なく訴えている時、それを眺めるジョンの目には涙が光っていました。 

母が生きていることを知ったジョンが現代に戻って会いに行きましたが、その様子からおそらくほぼ亡くなる直前だったのだと思います。 

自分が生きる「現代」で母と話せたこと、抱き合えたこと、お互いに愛を伝えあえたこと、これでようやくジョンの過去への旅は終わったのだと思います。

 

 

ジムはようやくこの壮大な物語を仲間たちに語り終わった。 

 「平和で幸せに暮らせる時代」がいつなのかは永遠の謎だが、もし彼が未来に行ったのなら、我々にも希望がある。 

変わり者だったジョン・テイラーを偲びつつ、彼らは研究棟を後にした。

 

おしまい

カーテンコールでは全員に迎えられて畠中さんが舞台の奥からテーマ曲とともにタイムマシンで登場!さすがにちょっと照れくさそうでしたが、主演ならではのこの演出に胸が熱くなりました。

そしていったん幕が下りてから鳴り止まない拍手にもう一度幕が上がると、畠中さんが舞台上でカッコよく脚を組んで座っていた…んですよ、初日の頃は。

でもだんだんお笑い路線に流れだし、変なポーズをいろいろやってました。

千穐楽の日は、舞台上段差の影でぴーんと体を伸ばして敵に見つからないようにしているキョウヤさん演じるスティーヴンの真似でした。   ↓こんな感じ。

ハマナカさんの作品はお話の本筋が壮大で、しかもその中にエピソードがてんこ盛り。

さらに一つ一つのエピソードの中に、たくさんの登場人物がリアルに生きているので、こうやって「あらすじ」を書こうとすると、どこまで書いたらいいのかわからなくなります。

 

エピソードそのものは「あらすじ」から割愛できるのですが、そうすると作品全体の面白さが伝わらない気がするし、かといってそこに現れる登場人物とエピソードを全部紹介しようとするとこの10倍ぐらいの長さになってしまう上に、ジョンの冒険の内容が伝わらなくなります。  文章にするって本当に難しいですねえ。(と、遅くなった言い訳です。) 

 

「本筋」とは関係なかったとはいえ、カーディガン伯爵とグレイ伯爵のエピソードを紹介できなかったのは無念です。(あの歌…『素敵な発明』はいつまでも耳に残りました。)

 

 

色々なところに伏線を張って、それをきっちり回収していく脚本の緻密さも、リピーターにとっては毎回新たな発見があって本当に楽しかったです。

 

最後に…

畠中ジョンは劇中劇のようにその時代時代に紛れ込んだ自分の役を演じつつ、時間旅行の顛末を語る語り部でもあります。説明セリフは膨大だし、スターウォーズばりの音楽とともにタイムマシンを操るというこてこてのSFの主人公にもならなければなりません。

その複雑な立ち位置、本当にお疲れ様でした!でも歌もお芝居も大活躍の畠中さんを拝見できて幸せでした!

 

高野ジムは、常に舞台の下手前方に座って「研究室でジョンの話を聞いている」聞き手として、あらゆる時代のあらゆるシーンに細かく反応しながら、ジョンに話しかけたり解釈を語ったりすることで、この物語全体を先に進めるもう一人の語り部でもありました。

舞台上から引っ込んだのはタイタニック沈没の一瞬だけではないでしょうか。

そしてジョンが去った後、彼の言葉を涙を流しながら皆に伝える姿に感動しました!

 

沼尾リンジーは、スレンダーなお姿がやせ過ぎなジョンとバランスが良いだけではなく、歌声の相性がばっちりでした!ものすごく明るくて前向きで、マイペースなかわいい奥様。

ああ、こういう人だから変人と言われた引きこもりのジョンとうまくやってこれたのねえ、と妙に納得してしまいました。

 

 

ぜひぜひ、再演or続編を楽しみにしています!

ジョンの衣装のままの畠中さんです!

マンチェスターユナイテッドのTシャツにロングジャケット。

 

こちらはハタ坊の会からのお花の写真と一緒に写っていただきました!

 

<おまけ>

地下通路にあるIMA HALLの宣伝映像です。 

3分ぐらいのサイクルでいろいろな映像が流れているのと、光が丘駅の改札の近くなので人通りがなかなか途切れず撮影のタイミングを逃していたのですが、千穐楽の日にようやく撮れました!

放映スケジュールは↑Disneyチャンネル公式ページでご確認ください。