「October Sky」東京公演観劇レポート

 

東京千穐楽から2週間近く経ってしまいました。 来週は大阪公演開幕なので、なんとかその前に東京公演のご報告をさせていただきます。

 

 

今回、開演前、終演後の舞台セットの写真撮影はOKだったので是非こちらもご覧ください。

 

 

時々文字が入れ替わり「OCTOBER SKY」 ⇒ 「ROCKET BOYS」になります。(私の撮影タイミングが下手すぎて文字が見にくいです)見事なアナグラム!


 

ここから先の人物紹介、あらすじ、感想はあくまでも私の主観によるものですので、必ずしも主人公にフォーカスしておりません。ご了承ください。

 

~ 主要人物紹介 ~  

公式サイトで写真チェック

主人公/ホーマー・ヒッカム(甲斐翔真)

ビッグクリーク高校に通うホーマー家の次男。炭鉱の町の閉塞感を息苦しく感じていたが、自分がこれから何がやりたいのかわからないまま日々を送っていた。 スプートニクを見たことで自分もロケットを打ち上げたいという夢を得て、高校の落ちこぼれ仲間と「ビッグクリーク・ミサイル・クラブ」を作る。 全米科学コンテストで優勝すれば奨学金で大学進学の道も開けると知り、試行錯誤を繰り返しながらロケットを作り、打ち上げ実験を重ねる。 しかし炭鉱での仕事が第一の父とは全く価値観が合わず、理解してもらえないことに苦しんでいたが、その父が大怪我を負ったことで代わりに炭鉱で働くため、高校も中退し夢をあきらめかける。

 

<ヒッカム家の人々>

父/ジョン・ヒッカム(栗原英雄)

コールウッド炭鉱のリーダー。何か問題が発生すれば24時間呼び出しに応じ事故を防ぐために自ら炭鉱に飛び込んでいく仕事一筋の男で、自分にも他人にも厳しく、口下手で頑固。有望なアメフト選手である長男ジムとは仲がいいが、夢見がちなホーマーには関心を払わず、ロケット作りもただの遊びと切捨て、やめさせようとしていた。 爆発事故に巻き込まれ大けがをしたが、彼の会社への忠誠心の強さは、昔は同じ立場だったはずの炭鉱夫たちとの間に大きな溝を作り、劣悪な労働条件に不満を募らせた彼らのストライキ突入を止められなかった。

 

母/エルシー・ヒッカム(朴璐美)

ジョンの妻でホーマーとジムの母。炭鉱第一の夫に変わってしっかり家庭を支える明るく前向きな女性。ホーマーのよき理解者で、ロケット作りについては全面的に応援している。出会った頃と変わらずジョンを愛しているものの、父と息子の関係に心を痛めていたので、ジョンが息子の夢よりも会社を優先しようとする態度についに怒りを爆発させる。

 

兄/ジム・ヒッカム(青柳塁斗)

高校でアメフトの選手として活躍する、ジョンの自慢の息子。当時はアメフトの選手は学校のヒーローだったので、マッチョな彼には怖いもの無し。 ガリ勉のクエンティンのことは率先していじめていたし、ホーマーの夢も最初は馬鹿にしていた。父の後を継ぐと思われていたが、アメフトの実力を買われて大学からスカウトされ、進学することになった。

 

<ビッグクリーク・ミサイル・クラブ メンバー>(ロケットボーイズ)

ロイ・リー(阿部顕嵐) 

義理の父アールの家庭内暴力の被害者。同情されたくないので明るく騒いだりわざと粗暴に振る舞っているが、実は友達思いでナイーブな青年。勉強にも科学にも全く興味はなかったが、ロケットを打ち上げたいというホーマーの夢に感化されていく。

 

オデル(井澤巧麻) 

一見ちゃらちゃらしているお調子者キャラだが、いつも明るい笑顔でロケットボーイズのムードメーカー。

 

クエンティン(福崎那由他) 

勉強はできるがひ弱ないじめられっ子で友人もいなかった。君の科学の知識が必要だとホーマーに口説かれても最初は逃げ腰だったが、ロケットを打ち上げたいという夢に火をつけられ、仲間に加わる。 ホーマーがロケット作りから一時離脱した時期には実質リーダーとなって活動を続ける。

 

<学校の人々>

ミス・ライリー(夢咲ねね)

ビッグクリーク高校の科学の教師。炭鉱夫になるしか選択肢のない環境で向上心や夢を持たない生徒達を歯がゆく思っていたので、ホーマーたちのロケット作りを全面的にサポートする。全米科学コンテストへ出場し優勝を目指せるよう厳しく指導し、特にホーマーとは教師と生徒を超えた友情で結ばれる。

 

ターナー校長(中本雅俊)

「生徒たちは炭鉱の天井に頭をぶつけないだけの知識があればいい」と考えていて、街の経済を支える会社の意向に忠実。ロケット作りもただの危険な火遊びとして禁止しようとしたが、全米科学コンテストで学校のイメージアップをチラつかせるミス・ライリーの誘導と彼らの熱意に影響され、いつのまにか強力サポーターになっていた。

 

ドロシー(中村麗乃) 

ホーマーに思いを寄せる同級生。生まれ育ったコールウッドの街を愛している。ロケット作りにのめりこみ街を出て行きたいと思っているホーマーを複雑な思いで見つめていたが、家庭の事情でロケットの夢をあきらめようとしていた彼の背中を押す。

 

エミリー・スー(磯部花凛)

ドロシーの親友で、ロイ・リーの彼女。

 

<コールウッドの炭鉱で働く男>

ケン(畠中洋) 

コールウッド炭鉱の労働組合長。ジョンとは長年の友人で、過去にはどちらが炭鉱のリーダーになるかを巡って張り合ったこともあるらしい。仲間思いで根は優しいが、炭鉱のそばでロケットを飛ばすホーマーたちへの目は厳しい。 人員削減を一方的に進める会社のやり方を巡り、会社の立場の代弁者のようになってしまったジョンと激しく対立し、ストライキを決行する。

 

アイク・バイコフスキー(筒井俊作)

ポーランドからの移民で、炭鉱の機械工場で働く技術者。ホーマーにロケット作りの技術指導をしてくれた影の協力者。その協力がジョンに発覚したことで炭鉱(採炭)に配置換えされた直後、爆発事故で亡くなる。

 

アール(大嶺巧) 

ロイ・リーの義理の父親。大酒飲みで暴力的。ロイ・リーを頻繁に殴っている。ジョンに厳しく警告されたためしばらくおとなしくしていたが、全米科学コンテストに必要なロケットを隠した犯人かも?

 

ミスター・オーティス(角川裕明)

炭鉱を経営する会社の役員。生産量も利益も落ちている現状から、コストカットのため人員削減を進めようとしている。

 

 

~ちょっと詳しいあらすじ~

 

ウエストバージニア州コールウッドは、炭鉱が街の中心。すでに斜陽産業とはいえ、男子は高校を出たら炭鉱夫になる以外に選ぶ道はない。

漠然ともっと違う将来を願うホーマーだが、やりたいことも、街から出る手段もわからない。

兄のジムはアメフト部の花形選手で、学校でも注目の的。父ジョンもジムのことを誇りに思っている。 そんな兄の陰に隠れ、悪友のロイ、オデルと一緒に変化のない高校生活を送っていた。 

ある日、ロシアが打ち上げた世界初の人工衛星「スプートニク」がコールウッドの上空を通過する姿を見たことで、ホーマーは初めて宇宙や広い世界を実感し、ロケットを打ち上げたい!という大きな夢が芽生えた。

早速科学雑誌を見ながら作った1号機は大失敗。自宅の柵を壊しただけで終わった。 そこで、オタクでいじめられっ子だが科学の知識を持つ同級生クエンティンも巻き込み、ロイ、オデルと4人で「ビッグクリーク・ミサイル・クラブ」を立ち上げる。運動部でもなく、勉強ができるわけでもない自分たち3人が、さらにいじめられっ子のクエンティンと仲間になることは、ある意味学校のヒエラルキーに対する初めての対抗でもあった。

ホーマーたちは炭鉱の機械工場で働くバイコフスキーの助けを借り、手作りのロケットで試行錯誤を繰り返す。ジョンはそんな息子に全くの無関心。母エルシーはジョンとホーマーの関係がうまくいかないことに心を痛めつつ、ロケット作りを全面的に応援していた。

 

高校の科学の教師ミス・ライリーは、彼らの夢を応援するだけではなく、全米科学コンテストへの出場を勧める。そこで優勝すれば奨学金で大学進学という将来も夢ではない。

 

労働組合長のケンは、炭鉱の人員削減を考えている会社に仲間たちの怒りが大きくなっていることをジョンに訴えるが、ジョンは会社を擁護するばかり。長年の友人だったジョンとケンの間に深い溝ができていく。

 

ジョンは会社の幹部に長男のジムを自分の後を継ぐ炭鉱の次世代のリーダーとして紹介しようと思っていたが、ジムはアメフトの才能を買われ推薦で大学進学が決まる。 ジョンはそれを喜びつつも、ホーマーには高校卒業後に炭鉱で働く以外の道を認めないという態度を強化する。 自分の夢を理解してくれないジョンにまだ強く反抗ができないホーマー。

ある日、ホーマーたちの打ち上げたロケットの軌道が逸れ、炭鉱のそばに落下し、大騒ぎになる。一つ間違えば大事故に繋がりかねない事態にジョンは激怒し、ロケットを遊びと切捨てこれ以上の実験を禁止する。

それでもホーマーはロケット打ち上げを諦めなかった。

やがて徐々に街の人々もロケット打ち上げの実験を楽しみに丘に集まるようになる。 ジョンが苦々しく思っていることを承知しながらも、ホーマーは徐々に自分に自信をつけていく。

そして全米科学コンテストの地区大会を勝ち抜き、ついに州大会でも優勝、次は全国大会というところまでたどり着いた。地元に凱旋し喜びに沸いたとき、炭鉱で大規模な爆発事故が起こる。

ジョンも巻き込まれ大怪我を負った。 また、ホーマーたちのロケット作りを手伝ったことで、機械工場から採掘に配置替えされたバイコフスキーが亡くなり、ホーマーは自責の念に押しつぶされ、さらに動けない父の代わりに炭鉱で働かなければならず、高校を中退しロケット作りからも遠ざかる。

 

ジョンがようやく怪我から復帰した日、「事故は人員削減による人災だ」と炭鉱夫たちの会社への怒りが抑えきれないほど膨らんでいて、組合長ケンはジョンと対立したままストライキ突入の号令をかける。

 

一方、ホーマーを欠いたまま全国大会に向かった3人だが、展示するロケットが何者かに盗まれピンチに。連絡を受けたホーマーは急いで新しいロケットを作り仲間たちに届けたいと頼むが、ストライキ中に機械工場を使わせることはできないとジョンに冷たく拒絶される。 息子の夢に関心を払わず意固地になっているジョンにエルシーが怒りを爆発させ、このまま仕事を最優先するようならば家を出て行くと宣言する。

炭鉱や家族を守るためと思って生きてきたはずが、いつの間にか自分のやり方を押し通すだけで周囲に壁を築いていたこと、その中で自分も身動きが取れなくなっていることに気づかされるジョン。

 

そして審査当日、ホーマーはジョンがストライキを終わらせてことで何とかぎりぎりにロケットを会場に届けられた。しかも校長の計らいで復学手続きも済ませ、正式にビッグクリーク・ミサイル・クラブのリーダーとして全国大会優勝の栄誉を分かち合った。

 

彼らの快挙を祝う街の人々とともに、ホーマーたちがコールウッドの丘でロケットを打ち上げる場に、初めてジョンも現れ、自分とは違う夢を追う息子に向き合った。 ケンや炭鉱の人々も全員一緒に星空に飛び立つロケットの光跡を見上げるのだった。

END

 

~ファンとして観る 畠中さんのケンについて~(見どころポイントなど)

 

初日のご報告でも書きましたが、まず幕開けでいきなり登場してソロを歌うケン・畠中さんの歌声が劇場に渋く力強く響き、「おおおおお!」でした。痺れました。

地の底に潜るのは死と隣り合わせ。今日もまた無事家族と会えることを神に祈りながら、仲間と支え合って仕事を続ける誇り高い男たちの歌です。力強く、でもどこか物悲しいメロディ。徐々に男たちが現れコーラスになっていくのですが、ケンが厳しい視線のまま仲間たちと頷きあう姿からは、深い絆が感じられました。

仕事を始める前、ジョンから他の炭鉱で爆発死亡事故があったことを聞き、全員に緊張が走ります。ケンは「死んだヤツの名前は?」とジョンに詰め寄ります。恐怖の浮かぶ目、衝撃を押さえようとわななく口元。その炭鉱でもきっとケンの友人が働いているはずで、彼らのことが脳裏をよぎっているのでしょう。うっすら涙まで浮かんでいるように感じる「リアル」がそこにありました。

 

ある夜、炭鉱の労働者の間では人員削減に対する不満が高まっていることを、組合長としてではなく「長年の友人として」話をしようとジョンの家を訪れました。楽しい話にならないことがわかっているからか、エルシーへの挨拶もどこかぎこちなく遠慮がち。案の定、会社擁護の態度を取るジョンとぶつかり激しい言い争いになりかけたとき、ジョンが急にせき込みます。炭鉱側の代表とはいえ、何かあれば常に炭鉱夫たち同様地下に潜るジョンの肺も傷んでいるのです。そんな身体なのに会社に忠誠を尽くすジョンを見るケンの目にはもはや怒りはなく、哀しみが溢れていました。ジョンの家から去っていくときの背中からも哀愁が…。

 

炭鉱のそばでロケットが落ちて大騒ぎになったとき、ケンがホーマーたちを睨みつける眼光の鋭いこと怖いこと!言葉は発しなくても「馬鹿なことをしているじゃない!」という怒りのビームが発射されていました。 ケンにとればこれは高校生の「お遊び」ですから当然の怒りです。あの目で睨まれてもロケット作りを諦めなかったロケット・ボーイズたちをほめてあげてもいいと思います。 

 

怪我をしたジョンの代わりにホーマーが初めて炭鉱潜るとき、ケンはホーマーにヘルメットを手渡し「行くぞ」と目で促すのですが、その空気は厳しいだけのものではありませんでした。なんというか、家族のために大人にならざるを得ないホーマーに対して、「俺についてこい」的な大きな愛が見えました。背中と目で語る男、ケン!

 

コールウッド炭鉱での爆発事故は会社の無理な人員削減が原因だと仲間たちの怒りは一触即発の状態に高まっていました。組合長であるケンは「ジョンが戻るまでは」とそれを押さえてきたものの、「俺がまず会社と話す」と言うジョンに「こいつらにとってはお前が会社そのものなんだ!」と現実を突きつけます。仲間として一緒に戦うのか、会社を選ぶのか、と迫るケンに即答できないジョン。友への失望と怒りに突き動かされるようにストライキを宣言するケンは本当にカッコよかったです。これはもういい、悪いじゃなくて「カッコいい」んだから仕方ありません。(ストライキを打つということは自分たちの退路も断ってしまうわけで、辛い決断なんだとは思いますが)


そしてラスト、全国大会で優勝したホーマーたちのロケット打ち上げを見学する人々の中には穏やかに微笑むケンもいました。おずおずと現れたジョンの肩を叩き、またも目で語り合います。星空に打ち上げられたロケットの光跡は、それを見上げるケンや街の人々のキラキラ輝く瞳に映っているようでした!

 

これは若者が夢をかなえる物語ではありますが、彼らを取り巻く大人たちにもきちんと物語がありました。ジョンとエルシー、ケンとジョンの関係がリアルにしっかり伝わってくるところが本当に素晴らしかったです。 

 

 カーテンコールで全員がポーズを決めるところ、いつも畠中さんが栗原さんの腰に抱きついて二人でおどけた顔をするという…そこだけ昭和の香りがするところもツボでした!

(以上)

 

 

畠中さん、東京22公演お疲れ様でした。来週の大阪公演も素晴らしい公演になりますように!

千穐楽の畠中さんからいただいたお写真はこちらにUPしてあります!

 

放映スケジュールは↑Disneyチャンネル公式ページでご確認ください。